賢い人の家造り

賢い人の家造り

 はじめに

 マイホーム建設は人生最大の事業であり、最高額の買物と言われています。

そして建築費と同等かそれ以上の金利とを、数十年に渡って払い続けます。

しかしそれ程の大金をつぎ込んだマイホームの平均寿命が、木造で26年、鉄筋コンクリート造で、36年という事をご存知でしょうか?

日本人の平均寿命が男女合わせて80歳を越えた現在、30〜40代でマイホームを購入しても、定年を向かえる頃には、リフォームか改築の選択を迫られるのです。(最近では、資金繰りから持ち家を手放し、集合住宅に住み替える熟年が増えているようです) 

日本経済が右肩上がりの成長期であれば、20〜30年での建替えも苦にならず、不動産(動かぬ資産)である住宅が、自動車や家電、設備機器などと同様に古くなれば買い替えるという感覚でいられましたから、土地は資産であっても、その上に建つ家は消耗品と考えていました。しかし、経済が停滞し、森林の伐採や建築物の解体に伴う廃棄物の処理等、地球環境に与える悪影響から、日本人のみが建てては壊すという愚かな行為を繰り返す事が、許されなくなってきました。 

欧米の住宅のように数百年の耐久性があれば、中古住宅市場も活発となり、土地以上に建物の価値が評価され、真の不動産(動かぬ資産)となります。

 建築基準法は最低の基準

 現在わが国で建てられている、建築基準法をコピーした建物では、数百年の耐久性を持たせることが出来ません。

何故ならば、設計士や施工者が建物を建てる際の基準とする、

建築基準法の総則の目的第一条には、

(目的)第一条

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

とあります。建築基準法を守らなければ罰せられますから、設計士も建設会社も最低の基準を守って建てます。そのため日本の住宅は最低な住宅しか建たなくなります。

困ったものです。最低は建築基準法に書かれてあっても、それ以上とはどうやって判断するのでしょうか?

 例えばモルタルに漆喰で仕上げた外壁と、タイルを外壁に使用した場合を考えて見ましょう。タイルの方が価格的に高価ですから、最高と思われるでしょうが、タイルは材料の性質上、床材、内装、特に水廻りに最適ですが、外装材としては、冬に暖房を必要とする地域では使用してはならないものです。

これは日本以外で行なわれている結露計算をすれば分かることです。(日本の結露計算式では外装材の透湿率は考慮されない)また、日本の結露計算では、外気温度と室内温度の差が大きいと必ず結露が起きるため、室内温度を低くして、寒い思いをするか、水蒸気を無くする以外方法が無かったため、壁の中に隙間を開け外気を入れる、通気層工法という水蒸気を排除する考えが生まれました。材料には適材適所がありますが、日本では屋根材を壁に使ったり、内装材を外装材として使うという、誤解や無知が建物の寿命を短命に終わらせています。 マイホームを快適で長持ちさせ、資産価値を高めるには正しい建築に関する知識が不可欠です。 建築基準法にある最低の基準と書かれている理由は、震災などの災害で、お役所の定めた基準に沿って建てられた建物が倒壊し、多くの死傷者が出た場合の責任逃れのためである事は、少し考えてみれば理解できます。何故ならば、日本の建築基準法は素晴らしい、広く世界に普及させたいので英語訳を出版する、と当時の建設省が自画自賛し、英語版が出版されていたからです。ウサギ小屋に住むエコノミックアニマルと嘲笑された数年後のことです。最低の基準と書いているのは、自己保身のためで、本心では、素晴らしいものと思い込んでいる建築基準法ですが、日本の住宅の質がどのレベルにあるかは、外国旅行をしても、ホテルだけに宿泊していては分かりません。

笑えない話

こんな話があります。

北アフリカの人から相談を受けた日本人の話です。

ー今度日本のプレハブメーカーの総代理店になり、日本のプレハブ住宅を北アフリカで販売しようと思うのだが、日本人の君はどう思うと尋ねられたそうです。

―北アフリカの家は何でできているんですか?

―ほとんどが石を積んだ組積(そせき)造建築です。

−耐久性はどの位ですか?−400〜500年位です。

―日本のプレハブメーカーの住宅にどの位の耐久性を望んでいるのですか?

―石の建物と同程度の耐久性なんて望みませんが、せめて半分の200年〜250年は持ってもらわないと。

ー日本の住宅の耐用年数は20〜30年です。

―絶句、、、、、総代理店の話は、お断りした方が賢明ですね。

ヨーロッパの石造りの建物は数百年持ち、木造建築の多いアメリカの住宅も100年以上の耐久性があります。かと言って建築費が高いかというと、むしろ日本の建物の方が高額なのですから驚きです。 

 

家が長持ちしない様々な理由 

日本の住宅が諸外国に比べて見劣りし、建物としての寿命が短い理由として、住宅の減価償却資産の耐用年数が、木造で20年、コンクリート造で47年という事に起因しているという説があります。木造で20年経過すれば価値が無くなってしまうのだから、長く持たせる必要が無いという理由らしいのですが、いかにも尤もらしく聞こえますが、50〜100年以上経ても価値のある家はわが国にも稀に存在し、高額で売買されているので説得力に欠けます。

 

 日本は昔から伊勢神宮にも見られるように、20年周期で建て替えを続けてきました。技術を絶やすことなく伝承させる日本古来の文化継承を理由とする説です。

確かに、神社仏閣等木造建築の伝統技術を必要とする建物の建築、修復には技術の伝承は必要ですが、現在建てられている一般住宅に後世に誇り伝承する技術が使われているとは思えません。

他に、「日本の住宅が何百年もの耐久性があったら、我々は、飯にありつけなくなってしまう、20〜25年位で建て替えるのが丁度良い」大手の住宅メーカーの技術系の意見としてよく耳にする話ですが、自社のカタログやテレビコマーシャルで百年住宅(センチリーハウジング)、超耐久性を謳っているにも関わらず、何とも志が低くプロフェッショナルとしての自覚が無いことに驚かされます。以上が建設関係者の意見です。

 

 また施主である消費者の話としてよく聞くものに、「時代時代によって住まい方も変わり、住宅設備も進歩しているのだから、子供達に親の建てた家を残す必要は無い、子供達は彼等なりの時代に合った家を建てれば良い」というものがあります。

これは如何にも尤もな意見のように我々日本人には思えますが、欧米人は違うようです。実際に200年前に建てられた木造住宅に住むアメリカ人も、500年前に建てられた石造りの廃屋を購入したイギリス人も、昔の不自由な生活をしている訳でなく、現代の快適な生活を楽しんでいます。

例えば16〜20世紀初頭に建てられたパリのアパルトマン(集合住宅)にはエレベーターはありませんでしたが、後に階段部分のスペースにエレベーターを設置しています。そのような空間が確保できない場合、中庭に外付けのエレベーターを取り付ける等、様々な工夫が見られ、電気も都市ガスも無い時代に建てられた建物でも、工夫をすれば何不自由なく現代生活に適応できるのです。 

 

「建物のデザインが時代に合わなくなるから、耐久性のある建物は必要ない」という意見もあるようです。確かに一戸の住宅だけが数百年前の建物で周りの建物が全て現代建築であれば、その建物は建築歴史記念館か文化遺産となりますが、周りの建物のほとんどが同じ時代に建てられたものなら、何の違和感も無く後世の時代に受け継がれていく筈です。

ヨーロッパには、未だに中世のままの姿で、町や村が存在しています。計画的に調和のとれた景観(ランドスケープ)を維持していけば問題にはなりません。

他の意見として、「日本は地震が多く、高温多湿だから」「梅雨があり、台風が来たり、雨量が多く建物が傷みやすい」という日本の気象条件が諸外国に比べ過酷とする説があります。

地震により建物が倒壊する程の大地震が、20〜30年毎に同じ地域で頻繁に起きているという事実は日本には無く、関東大震災が起きた1923年以後関東地方では大きな地震は皆無です。また建物の倒壊及び死傷者の数は、関東大震災、阪神淡路大震災の例に見られるように、火災による処が圧倒的に多いのです。

高温多湿は温帯モンスーン気候の特徴であり、アメリカ南東部も同様であり、日本の建物の耐久性が短い理由にはなりません。 

「東京の建物は関東大震災や空襲で残っていないが、地方に行けば、古い建物は沢山残っている。現に法隆寺や正倉院は千年以上経っているし、日本の木造建築技術は外国からも高く評価されている」

 法隆寺や正倉院は、人間が修行修練する場であったり、倉庫として使用されている物で、人間が生活する場所ではありません。日本建築の重要文化財として保護されている建物のほとんどが、明治時代以後に建設されたものです。

外国人が評価するのは異文化に対しての好奇心であり、エキゾチックな憧れに過ぎません。

実際に古い日本の民家を購入し、そこで生活すれば、先ず、あまりの寒さに閉口し、現代人が生活できる環境に改修するか、家の中で焚き火をし、寒さに耐えうる精神力を鍛えるかの選択肢しかありません。 以上見てきたように日本の住宅の耐久性が短い理由には、どれも説得力に欠け、逆に住宅に耐久性があれば、親子代々住宅ローンに追われること無く、日本人の生活が、今よりも、ゆとりある豊かなものになることは間違いありません。

 

日本人より年収の少ないイタリア人でも、40パーセント以上の人が別荘を所有しているそうです。先祖が造った石の家が、数百年の耐久性があるために、自宅を建てる必要がなく、別荘を持てるのだそうです。 

定期借地権の問題 

 

平成4年8月に施工された「借地借家法」によりいわゆる定期借地権が誕生しました。

従来の借地権と異なり、当初定められた契約期間で借地関係が終了し、その後更新がありません。この制度によると、土地所有者は従来に比べ、安心して土地を貸すことができ、借り主は、従来より少ない負担で良質な住宅を持つことができるので、土地の貸し借りが円滑に行なわれ、住宅・宅地政策上も有効な制度と考えられています。

一般定期借地権は、借地期間を50年以上としたもので、期間満了に伴い、原則として借り主は建物を取り壊して、土地を返還する必要があります。

さてここで問題となるのが、建物の耐久性の問題です。住宅の寿命が25年であれば、50年間に2度建てる事になります。しかしそれでは借り主が少ない負担で良質な住宅を持つという原則が崩れる事になります。

このような事からも、耐久性のある住宅建築は急務である事が分かります。

 

 基礎の換気口と防湿シート

 

 日本の住宅スタイルもモダンになり、外観を見ただけでは欧米の住宅か、日本の住宅か判別しにくくなりました。

そんな時に簡単に見分ける方法があります。それは床下に換気口が付いているか否かという事です。換気口が付いていれば日本の住宅です。

欧米の住宅でも換気口が付いているように見える建物もありますが、よく見れば換気口にしては大きい事に気が付きます。欧米では一般的に地下室があり、採光のため格子の付いた窓が付いていますが、決して換気口ではありません。

最近日本の住宅でも、地中からの湿気対策として、床下に防湿フィルム(シート)を施し、地面を覆うようになりました。地中からの湿気は基礎(土台)を腐らし、断熱不足であれば、足下が冷え、不快で病気の原因にもなります。

床が軋んで鳴り、建替えを考える例も多いようですが、床下からの湿気が主な原因です。

日本の建築基準法では、床下に換気口を設ける事が義務付けられていました。

これは防湿フィルム(シート)という発想が無い時代に、通風、除湿を目的としたものと解釈できますが、地中からの湿気を防湿フィルム(シート)で防ぎさえすれば、床下の換気口は不要になります。

折角防湿フィルム(シート)で湿気を防いでも、換気口から湿気が浸入して来ては、防湿の意味をなしません。常に通風していれば問題ありませんが、風が無ければ湿気も床下で停滞し、結露の原因となり、耐久性、快適性に大きな影響を与えます。

基礎に換気口を開けることは、構造的に見ても基礎を弱めることになるのは、多くの家の換気口に、斜めにクラックが入っている事で証明されています。

最近の公庫の仕様書では、防湿フィルム(シート)を施し、床下断熱されている建物に関しては、換気口を開けなくてもよいという事ですが、しかしそれでもまだ不十分です。勉強するにしても、スポーツをするにしても基礎がしっかりしていなくては耐久性のある建物など建つ筈がありません。

金融公庫の仕様書を見ても基礎の深さは、凍結深度より深ければ良いとの事で、地域差がありますが、寒冷地以外の地域での標準は、最低120ミリ以上(地面からフーチンの上場まで)ですから、せいぜい地面から30センチ程度の深さに基礎があります。

欧米では建物の基礎は、数万年前からある地表の上に載せるように教育されています。

また地下室が一般的であるため、地面から2メートル以上深い所に基礎があります。

日本の山を切り開いた造成地などでは、地面自体が数ヶ月前に盛った土で、その上に基礎が建つようでは、地震に強い家が建つ筈も無く、耐久性など期待できません。

わが国では専門分野が異なる場合、横の繋がりが無く、土の上に建物を建てる建築士が基礎まで設計しているために、基礎の重要性が理解できないようです。

阪神淡路大震災で、地上に比べ地下の被害が微々たるものであったため、首都圏ではライフラインの埋設工事が急速に行なわれている事をとっても、地震においての地下の有効性が証明されています。 

 

水を近付けない家造り 

 

家が長持ちしない理由として、火災による消失、これは不注意や放火など人為的であり、地震による倒壊は自然災害です。

しかし火災により消失し、地震により倒壊する家は、建替えられる家のほんの僅かでしかありません。ほとんどの建物は、老朽化により建替えられています。

木材が腐り、鉄筋、鉄骨が腐食し、コンクリートが劣化する。これらの原因は水と熱にあります。水は雨水と、水蒸気が冷えて起きる結露であり、熱は夏の直射日光と温度変化による膨張収縮によります。

設備の老朽化は前もって予測することで対応可能です。日本の集合住宅では、築10年も過ぎると、パイプが錆、赤水の問題が起きています。これはパイプの径が細く、1年で5ミリ錆び付くと10年も経つと水も流れにくくなり、錆を運ぶようになるからです。

水に石灰が多く含まれているヨーロッパの国では、石灰が年々蓄積されても100年は持つパイプの径があり、また容易に点検、修理ができるスペースを建物内部に確保しています。

 集合住宅という居住形態に長い歴史を持つヨーロッパの国々と、数十年の歴史しかない日本では、建物を維持管理するための知恵や知識の差は、日本の建築関係者が想像する以上に現れています。

欧米の建築図書を見れば、必ずDrain(暗渠=地面の下に設けた排水パイプ)Drainageに関する写真や図が出ています。しかし日本の建築図書では見たためしがありません。

 ドレインが無い場合、屋根や雨樋を伝わって雨水が地面に落ち、土を濡らす、その雨水が暗渠が無いと、行き場が無く、基礎や土台を腐らし弱めます。

水分があれば、湿気として地中から地上に上がって来ます。

いくら防湿フィルムや基礎断熱を施しても、基礎廻りの水、湿気対策がなければ不十分です。欧米の戸建て住宅の基礎廻りを辿って見ると、基礎から1メートル外側迄の地面が乾いている事が、確認できます。

これは基礎フーチンの脇にドレイン(排水パイプ)を儲け、下から石、砂利、砂と水が排水し易い順序で、施工されている事によります。Fail-safe(二重の安全策)から基礎廻りに遮水シートを施工されるとより良くなります。こうする事で、数百年の耐久性を持たせるための基礎ができます。 

 

建築 誤解だらけの知識と技術 

 

日本の常識世界の非常識という言葉があります。

日本で常識とされている事が、日本以外の国では非常識と思われている。

という意味ですが、この言葉の真理に気が付いている人はほんのわずかで、ほとんどの人は冗談か、揶揄か、誇張と考えています。

そのため何時まで経っても問題の解決がなされずに先送りされています。

それは聖徳太子の時代より、「和を持って尊しとなす」という人を傷つけたり、争いを好まず、他人を思いやる日本的美徳が、逆に責任の所在を明白にしないまま、誤りを解決する手法、手段を学習しない社会風潮を形成してきた様に思えます。

 例えば、結露防止対策に於いて、外国で普通一般的に行なわれている事に対して、その対策がわが国では、全く逆の事が行なわれていたら、これは喜劇を通り越して悲劇です。

何故ならば結露は水蒸気と熱の関係により起こることですから、科学という普遍性のもとに世界で共通の現象です。日本と外国では水蒸気の性質が違うという事はありえません。

 誤解だらけの結露対策 

 

日本の家の造りは、石油危機が起きた1973年頃から大きく変わりました。

この年の10月第四次中東戦争が勃発し、アラブ産油国は原油価格の引き上げ及び供給削減など石油戦略を発動しました。

原油価格は1バレル3ドルから一挙に12ドルへと4倍に急騰し、その結果、石油依存度の高いわが国をはじめ多くの石油消費国では経済が大きく混乱しました。

これが第一次石油危機(世に言うオイル・ショック)です。

そのため省エネルギー政策が採られ、建物に断熱材を使用するようになりました。

それは、日本古来の風通しが良い夏型の住居から、断熱され密閉化した欧米によくある省エネ住居に180度移行する筈でした。

何故ならば、断熱材を入れるという事は、外からの熱を断つ事ですから、外が寒い冬に屋内は寒さから遮断され、外が暑い夏には室内は暑さから遮断されていなければなりません。

そのためには、従来からある暖房システムも建築デザインも変える必要がありました。

しかしそんな認識のないまま、断熱材を入れながら、暖房は石油ストーブや石油ファンヒーター等の換気の必要性があるものか、電気ストーブや炬燵のような局所暖房で賄われていました。

住宅デザインも南側に大きなガラス窓を設けた、日当たりの良い南面を重視した設計が継続されました。

この結果、断熱材の裏側で結露の被害が続出しました。

しかし当時は結露という言葉も認識も無く、雨も降ってないのに雨漏りか、屋根裏や壁や床が濡れていると、鼠の小便か幽霊の仕業か、と思われていました。

結露の被害も密閉性の高いコンクリート造やツーバイフォー住宅に多く、在来木造工法では結露が起きないと豪語しているハウスメーカーもあったほどです。(言い換えれば、隙間が多く、暖房ロスが多く、省エネルギーに反する寒々とした住宅という事ですが)断熱材を入れても、防湿という認識など皆無で、断熱材の厚さも薄いものでした。

 

 断熱材に付いている銀紙 

 

木造在来工法の現場を外から見ると、下地板の間から断熱材(グラスウール)を包んだ銀紙(ビニールにアルミ箔を蒸着した)が光っている姿を目にします。

不思議に思って調べてみると、

グラスウールには細かなガラスの破片が含まれているため、施工する大工さんが手を怪我する恐れがあるので、防止策として銀紙を覆っているという説。

魔法瓶の中のガラスの内側に銀紙が覆っているのと同様に、銀紙には保温性があるため、断熱材の屋外側に使用している。等わが国には諸説があります。

しかし銀紙の本来の意味は、防湿層(ベーパーバリア)として、断熱材の室内側に置くものです。チョコレートやタバコが銀紙に包まれているのと同じ理由によるもので、チョコレートやタバコを湿気から守るためです。

断熱材の中を水蒸気が通り抜けることにより、水蒸気が冷やされ結露の原因になるので、断熱材の内側(室内側)に防湿層を持ってきます。

それでも100パーセント水蒸気の浸入を防ぐのは不可能ですから、断熱材の外側(屋外側)に透湿抵抗の低い(水蒸気の通し易い)材料が必要になります。透湿抵抗の高い(水蒸気の通しにくい)材料では、断熱材の裏側の外気温度に近い部分で結露が起きます。

わが国では、断熱材の銀紙に小さい穴を開けていますが、穴をふさぎ銀紙を屋内側に向け、クラフト紙を屋外に向け、断熱材をとめるのが、欧米での施工法であり本来の姿です。 

 

レンガの空隙と通気層 

 

西欧建築には石やレンガを積んだ、組積(そせき)造建築が多く、石やレンガ(粘土に砂を混ぜ窯で焼いた)構造材として、外装は左官(主に漆喰)で仕上げています。

古い建物は石やレンガを積んだ1メートル以上の厚い壁でしたが、雨等に濡れると壁の内側まで浸透し乾きにくい上に、ジメジメ湿った状態が続き、健康的にも、また冬季は凍害等の恐れもあり、構造を劣化させるため、 二重壁にして間に空隙を設け、外からの雨や雪等が内側の壁を濡らさない様にしました。

 高温で焼成したタイルと違い、レンガは気孔があるため雨水を浸透させ易い、そのため外壁と構造材のレンガの間に空隙を設けています。

レンガを積む場合の注意事項として、レンガを積むために使用するモルタルがはみ出して、外壁と構造材レンガをつなげないように、空隙の隙間を大きくとると対流を起こすため、空隙の幅は広くとらないように、等があります。

この空隙が外からの水対策である事は、水抜きとウィ−プホール(積まれたレンガの横3−5個おきに縦メジを省いたもの)がある事で分かります。

空隙の底に落ちた雨水を水抜きとウィープホールで外に出しています。構造が木造ツーバィフォーが多い北米の場合も、外壁にレンガを積んでいる時は、同様に水抜き、ウィープホールを設け、構造材である木を濡らさない配慮がなされています。

この空隙を内部結露防止対策として、水蒸気を外に逃がすための通気層と誤解したのが、日本で行なわれ流行している通気工法です。

 

 通気・換気が結露防止対策という誤解 

 

結露とは気体の水蒸気が冷やされて、液体の水に状態変化する現象ですから、冷えた箇所を建物の中につくらなければ解決できます。

しかし日本では、結露は水蒸気があるために起きるのだから、水蒸気を排除しなければならないと考えられているようです。(前述したように、日本で行なわれている結露計算では、室内と屋外の温度差を少なくするか、水蒸気を無くす以外結露を防ぐ方法が見つからないのです)

 

「一日に人間一人が、発生する水蒸気量は一升瓶一本半、四人家族では一日6本になり、そのうえ人間が生活する上で発生する水蒸気(炊事、入浴等による)が加算されるとかなりの量となり、従って換気、通気は不可欠だ」というのが理由のようです。

水蒸気が短時間で多量に発生する、台所、風呂場等は換気の必要がありますが、そうでない居室等は余程の愛煙家がいない限り必要ありません。

しかし暖房器具が、石油ストーブや石油ファンヒーター等有毒な炭酸ガスを発生する物であれば、換気の必要があります。

しかしこの様な暖房機器は、省エネルギー建築を目的として、結露を防ぎ、耐久性を求める高断熱高気密住宅には相容れません。

わが国で、高断熱高気密がイコール換気・通気になってしまった原因はここにもあります。

風通しの良い、開放型の日本古来の住宅では、囲炉裏や火鉢等の家の中で火を燃やす事が可能で、その延長として、石油ストーブ等の一酸化炭素を発生する暖房器具が使用されてきました。欧米では昔から、石やレンガを積む組積造の密閉型住宅であったのに対し、わが国では、寒さの厳しい北海道や東北等でも、風通しのよい開放型住宅が建てられてきました。 

 

ヨーロッパで生まれた温水暖房機メーカーが、日本の高原にある新築ペンションに温水暖房機を販売した処、冬に、宿泊客のいない部屋の暖房を止めていたら、部屋の中にあるパイプの水が凍ってしまい、以後、車のラジエター同様に不凍液を流しているという、笑うに笑えない話があります。

暖房を止めたら家の中でも凍るなら、断熱材が入っていても用をなしていない事になります。

例え冬に、外気温度が氷点下数十度であっても、断熱とは熱を断つ事なのですから。 

 

日本で建てられているマンションを外から見ると、至る所に丸いステンレスのフードが付いた換気口の穴が開いています。

一戸に北側だけでも5〜10個もありますが、台所、風呂、トイレが幾つもあるとは思えません。あれほど換気口があるとかなりの量の熱も逃げている筈で、何のために断熱材を入れているのか、省エネルギー対策になっているのか、考えさせられてしまいます。

 

 省エネルギー対策によりーーー断熱材が普及―ーー断熱材の裏側で内部結露―ーー結露の原因は水蒸気にあるーーーよって換気・通気

という図式が日本の状況ではありますが、これでは真の省エネルギー対策にも結露防止にもなりません。 

 

近年日本では、ホルムアルデヒド等室内空気中の化学物質汚染によるシックハウス問題で、換気が奨励されています。

ホルムアルデヒドの最も大きい発生源は、ユリア樹脂系接着剤を使用した木材製品で、合板、パーティクルボード等に使用されており、床のフローリングからドア、棚、壁パネル、家具等で、放散量は製造直後が最も多く時間が経過するに従い減少します。

しかし夏の温度が高い時期に、接着剤が溶け放散量が増えます。

自動車も新車に乗ると新車特有の臭いがしますが、これも接着剤によるホルムアルデヒドが原因です。 

アスベスト(石綿)問題と同様で、根本的な対策は、ホルムアルデヒドを発生させる材料の使用を禁止することに限ります。これは経済産業省、厚生労働省と国土交通省等の関係省庁が、国民の健康を考慮して製造を許可しなければ済む問題です。

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